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2022.07.12

相続分の放棄と相続放棄

家庭裁判所における遺産分割調停・審判において、相続人は自身の相続分を放棄することができます。相続分を放棄すると、その相続人は遺産分割調停において、当事者としての地位を失うことになります。

この相続「分」の放棄は、相続放棄とは異なる制度です。一番の違いは、相続人の債務を受け継ぐか否かという点。相続放棄をすると、相続人の債務から免れることができますが、相続分の放棄は相続人の債務には影響せず、そのまま債務を受け継ぐことになります。

また、相続放棄は期間制限があり、家庭裁判所への「相続の放棄の申述」という手続が必要となります。相続分の放棄は、調停・審判の手続中であれば特に期間制限はなく、別途の手続をする必要がない(相続分放棄届出書と印鑑証明書の提出のみで受け付けることが多い)ので、この点も違いがあります。

名称は似ていますが、相続人の債務を受け継ぐか否かという点で大きな違いが生じる制度。相続人としての地位を望まないのであれば、早めに相続放棄の手続をした方が良いと思います。

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2022.07.05

調停による遺産分割 その4〜相続人の範囲〜

遺産分割を行うためには、「誰が相続人か」を明らかにしなければなりません。

通常は、戸籍を調べて相続人の範囲を確定してゆきます。

ただ、相続人に配偶者や養子がおり、婚姻や縁組の成立が争われる場合は、相続人の範囲をすぐに確定することができません。このような場合、最終的には訴訟で決着をつけなければならなくなります。具体例として、被相続人に無断で縁組届を提出した場合などが考えられます。

また、相続放棄の有無なども、相続人を確定させるために必要です。相続放棄は裁判所での手続が必要ですので、比較的容易に確定することができます。

これに類似するものに、「相続分の譲渡」「相続分の放棄」という手続があります。相続分の譲渡とは、相続人が他の相続人に対して相続を受ける権利を譲渡するものです。相続分の譲渡がなされると、譲渡した者は相続人ではなくなり、遺産分割の当事者から外れます(なお、相続分を譲渡した旨の書類には実印を押印し、印鑑証明を添付する運用が実務上なされています)。

相続分の放棄は、調停・審判の手続中に、裁判所に対し、相続分を放棄することで、遺産分割の当事者から外してもらうことです。詳しくは次回以降でご説明しますが、相続放棄とは異なる手続です。

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2022.06.29

調停による遺産分割 その3〜調停の進行〜

家庭裁判所による調停の手続は、調停委員が各当事者から話を聞くことが中心になります。当事者が同時に調停委員に話をする方法(これを同席調停と呼んでいます)もありますが、対立している当事者同士が同じ部屋で話をすることは困難であるため、実際にはあまり使われておりません。

遺産分割調停では、①相続人の範囲→②分割の対象となる相続財産の範囲→③相続財産の評価→④寄与分・特別受益の有無→⑤具体的な分割方法の順番で話合いを進めることが多いのですが、具体的には裁判官と調停委員の裁量に委ねられています。

裁判所で調停を行う日(調停期日といいます)は、おおむね1ヶ月から2ヶ月に1回程度のペースで指定されます。解決までの期間は、事案の内容によって様々で、数回の期日で調停が成立(または不成立)になるケースもあれば、2年以上かかるケースもあります。

近年、民事訴訟では、Webを使っての裁判手続が導入されました。家庭裁判所においても、Webによる調停手続の運用実験を行っているようです。設備や人員の問題もあるので、Webによる調停が実現するにはまだ時間がかかるのかもしれません。

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2022.06.10

調停による遺産分割 その2〜調停の申立〜

 遺産分割調停は、裁判所での遺産分割調停を希望する相続人が、家庭裁判所に調停申立書を提出することによって始まります。調停申立書を提出した方を、「申立人」と呼びます。

調停申立書には、申立人の氏名や住所、亡くなった被相続人の情報、申立人以外の相続人(調停手続では「相手方」と表現されます)の情報、相続財産の情報のほかに、遺言書の有無などを記載されます。また、戸籍や住民票、登記簿謄本などの添付資料の提出も必要になります(詳細は裁判所のホームページで確認することができます)。

調停の申立は、遺産分割調停を希望する相続人本人でもできます。ただ、代理して申立をすることができるのは、弁護士のみです。弁護士以外の者が代理人となることはできません。

調停の申立が受理され、裁判所内での手続(裁判所内部での配点や、調停委員の選任など)を経ると、第1回の調停期日が決められ、呼出状が相手方に送られます。

相手方には、申立内容について回答を求める書面が送られます。第1回調停期日までに裁判所に提出するよう求められますが、間に合わなくても第1回調停期日が開催されます(その場合は調停委員から質問されることになります)。

第1回調停期日においては、申立人と相手方双方が調停を行う部屋に呼ばれ、調停の手続について説明を受けます。本来は同席で行うべきですが、感情の対立などから、別々に呼んで説明をすることも少なくありません。

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2022.04.06

調停による遺産分割 その1〜調停とは〜

 協議による遺産分割ができない場合は、裁判所の手続で遺産分割をすることになります。裁判所での遺産分割の手続は、「調停」と「審判」があります。

まずは、「調停」という手続についてお話をさせていただきます。

「調停」を辞書で調べると、「第三者が紛争当事者に介入し、当事者双方の譲歩を引き出し、合意により紛争を解決に導くこと」という意味であることがわかります。調停のポイントは、相続人である当事者以外に、第三者が介入するという点です。

裁判所での調停で、この「第三者」に該当する存在が「調停委員会」です。この調停委員会は、原則として1名の裁判官と、2名の調停委員の3名によって構成されます。

裁判所の調停は、この3名の調停委員会によって進行されることになります。もっとも、裁判官は多くの事件を抱えているので、常に調停の場に同席しているわけではありません。そのため、進行の大部分は調停委員2名によって行われます。

調停委員会が争いになっている点を整理し、感情的な対立を抑えることで、話合いによって解決する手続が調停になります。話合いがまとまらない場合は、調停は不成立となり、審判という手続に進むことになりますが、調停によって話合がまとまるケースは少なくありません。

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