離婚

離婚を考えている

1,離婚の手続

 我が国における離婚は、離婚届を提出する方法と、裁判所の手続による方法があります。夫婦の双方が離婚すること、および子どもの親権者を父母のいずれにするかについて合意があれば、離婚届を提出することで離婚できます。

 もっとも、離婚届には養育費や、夫婦の財産を分ける財産分与について記載する欄がありません。これらの合意を書面化し、かつ強制執行できる状態にするためには、別途公正証書を作成する必要があります。

離婚届による離婚が難しい場合はどうするの?

 家庭裁判所の手続を選択することになります。家庭裁判所でも、まずは話し合うことで夫婦の合意をめざす「調停」という手続を行います。これは、裁判官1名(非常勤裁判官と呼ばれている家事調停官を含む)と調停委員2名の3名からなる調停委員会の仕切りの下、夫婦それぞれの話を聞き、問題点を整理し、合意を目指す手続です。話合がベースですが、裁判になったらどのような結果になるか、という法律的な観点も踏まえたものになります。なお、裁判官も調停委員も中立な立場ですので、どちらか一方の味方をすることはありませんし、離婚について積極的にアドバイスすることもありません(アドバイスを求める方には、「弁護士さんに相談してください」と伝えます)。

離婚届による離婚が難しく、調停で合意できた場合

 離婚届による離婚が難しい場合でも調停で合意ができれば、裁判所が調停調書をいう書類を作成しますので、この書類で離婚の手続ができます。調停調書では、離婚や親権者指定のほか、養育費や財産分与、慰謝料に加え、親権者ではない親と子どもとの面会のルール(面会交流)などを取り決めることができます。調停調書に定められた金銭の支払がない場合は、強制執行の手続を取ることも可能です。

離婚届による離婚が難しく、調停で合意ができなかった場合

 調停で合意ができなかったが離婚をしたい、という場合は人事訴訟を提起しなければなりません。これは、離婚をすることが相当か否かを、裁判所が証拠に基づいて判断する手続です。証拠によって事実の有無を判断する手続ですので、法律的な知識や経験が必要となります。なお、人事訴訟においても、和解と呼ばれる話合によって離婚できることがあります。

2,離婚に付随する決め事

 夫婦が離婚する際に決めることは、大きく「子どもに関すること」と「お金に関すること」に分けられます。これらについても、まずは夫婦の合意によって定め、それが叶わない場合に裁判所の判断によって決めることになります。

(1)子どもに関すること

 未成年の子どもがいる場合、父母の一方を親権者として指定しなければなりません。原則として、親権者が子どもと同居し、養育することになります。もっとも、子どもは親権者ではない親(非親権者)と交流する権利があるので、非親権者と子どもとの面会のルールを定めることになります。これを面会交流と呼びますが、面会交流は子どもの権利であり、親の都合で奪うことはできません。

(2)お金に関すること

 離婚に際しては、夫婦の財産を分配する財産分与、未成年の子どもの養育費、離婚に対して責任のある者に対する慰謝料を決めることがあります。
財産分与は、離婚時ないし別居時に存在する夫婦の財産を合算し、その2分の1を夫婦それぞれが取得する、という2分の1ルールが採用されることがありますが、それ以外の方法で分配されることもあります。
養育費は、夫婦それぞれの収入と、子どもの年齢をベースに算出した養育費算定表(裁判所が公開しています)を参考にして決めることが多いのですが、必ずしもこれに拘束されるわけではありません。
慰謝料は、離婚に至ったことに対する精神的な損害賠償ですが、いかなる原因でも慰謝料が認められるわけではありません。慰謝料の有無および金額は、法律や裁判例の積み重ねによって形成されてきた一定のルールがあります。なお、ここにいう慰謝料は夫婦の一方から他方に対する慰謝料請求です。不倫相手などに対する慰謝料請求は、こちらをご覧ください。

3,離婚にあたって弁護士をどう活用するか

 まだ裁判所の手続に至っていない場合は、離婚についての法的なアドバイスと相手との交渉のために弁護士を活用することができます。相手との交渉においては、弁護士以外の者が代理人になることは禁止されております。弊所では、専門的な知識と豊富な経験に基づき、裁判所がどのような判断をするかという見通しの下、ご相談者様にとってベストとなるアドバイスを行っています。また、離婚後の生活の見通を踏まえ、離婚によるメリットやデメリットについても助言します。
調停や人事訴訟など、裁判所の手続が開始されている場合、代理人として調停や人事訴訟に参加します。調停や訴訟の期日や、その間における打合せで、状況の変化に応じたアドバイスを行ってゆきます。

別居している

 離婚に至る前に、夫婦が別居していることはめずらしくありません。別居しているがまだ離婚には至っていない状態においても、「お金に関すること」と「子どもに関すること」を取り決めることができます。これらの取り決めの多くは、家庭裁判所において行われています。

1,お金に関すること(婚姻費用分担)

 婚姻関係にある夫婦は、法律上互いに扶助義務を負っており、夫婦と子の生活費は、資産・収入等に応じて夫婦が分担することになります。別居している状態であっても、原則としてかかる義務を免れることができません。したがって、夫婦それぞれの収入や、子どもとの同居の有無等を勘案し、婚姻費用の分担額を定めることになります。その金額の算定方法は、養育費と同様に、夫婦の収入と同居している子どもの年齢をベースとしております。一般的には、収入の多い方から、収入の少ない方に婚姻費用が支払われます。
婚姻費用分担に関しても、まずは夫婦間の話合い(裁判所における調停を含む)を目指し、それが難しい場合に裁判所が審判という形で決めます。なお、婚姻費用分担請求と離婚の調停が同じ手続で進むこともめずらしくはありません。

2,子どもに関すること

(1)監護者指定・子の引渡

 別居に際し、夫婦の一方が無断で子どもを連れていってしまうことも少なくありません。離婚に際しては親権者を決めますが、別居の段階ではどちらが子どもを養育するか明確に決めないことが多いので、子どもの引渡を巡ってトラブルが生じることもあります。
離婚前において、子どもが父母どちらと同居するかという点は、子どもの利益を最優先に考えて判断します(子どもと同居して養育する親を「監護者」と呼んでいます)。この判断は、家庭裁判所に所属する「調査官」と呼ばれる専門家の調査に基づき、裁判所が判断することになります。家庭裁判所の実務においては、子どもが未就学児で、母親が専業主婦(ないしそれに準じる程度の就労状況の方)である場合は、母親が監護者として指定されるケースが多いのですが、父親を監護者と指定されるケースも見受けられます。
監護者に指定された親は、監護者でない親に対し、子の引渡を求めることができます。監護者の指定と子の引渡は同時に申し立てられることが多いので、監護者指定の申立をした方(申立人と呼びます)が監護者に指定された場合、子どもが監護者に元に戻っていなければ、監護者に引き渡すよう求める審判が出されます。引き渡すよう求める審判が出た場合、相手がそれに任意に応じない場合は、強制執行や人身保護請求の手続を行わなければなりません。
なお、緊急性を要する場合は、審判前の保全処分という方法で、審判が出る前に、監護者を仮に指定し、この引渡を命ずる場合もあります。

(2)面会交流

 離婚前であっても離婚後であっても、子どもは、離れて暮らす親と面会し、交流する権利があります。もっとも、子どもが幼い場合は、一緒に暮らす親の協力がなければ、離れて暮らす親と会うことはできません。したがって、同居する親は、子どもと離れて暮らす親との面会交流のルールを定め、それに従い面会交流を実現させなければなりません。
しかし、夫婦間の関係が悪化している場合、子どもとの面会交流を拒否されるケースも少なくありません。そのような場合には、家庭裁判所において、面会交流のルール作りや、試験的な面会交流の実施を進めることができます。
もっとも、子どもに対する虐待があるなど、面会交流が子どもの成長にとって不利益である場合は、面会交流が認められない場合もあります。

3,離婚に向けての手続

慰謝料を請求したい・請求されている

 夫婦が離婚に至る場合、慰謝料を請求するという場合が少なくありません。これは、夫婦間における慰謝料請求(妻から夫に対する請求か、夫から妻に対する請求)と、不貞行為に基づく慰謝料請求のように、夫婦の一方から第三者に対する慰謝料請求があります。

1,夫婦間における慰謝料請求

 夫婦の一方に離婚原因についての責任がある場合、他方は離婚に伴う慰謝料を請求することができます。もっとも、すべての離婚原因が慰謝料の対象となるわけではなく、不貞行為や暴力、犯罪など、比較的重大な事柄に限られております。いわゆる性格の不一致などでは、慰謝料が認められる可能性は低いでしょう。
慰謝料の金額は、行為の悪質性や、婚姻期間の長さ、婚姻破綻への影響など、さまざまな事情を考慮して決めることになります。

2,第三者に対する慰謝料請求(不貞行為に基づく慰謝料請求)

 不貞行為とは、一般的には、第三者が配偶者のいる者との間で肉体関係に至ることを意味しています。第三者と肉体関係に至った者の配偶者は、その第三者に対して、不貞行為に基づく慰謝料請求をすることができます。もっとも、その第三者が、相手に配偶者がいることを認識して行為に及んでいなければなりません。
不貞行為相手に対して慰謝料を請求できる根拠は、婚姻して共同生活を維持する権利を侵害した点にあると説明されています。そのため、長期間の別居など、すでに夫婦関係が破綻している場合は、慰謝料が認められない場合もあります。
なお、慰謝料の金額については、不貞行為の期間や回数、夫婦の婚姻期間、夫婦間の子の有無や子の年齢など、さまざまな事情を考慮して決めています。

3,慰謝料請求の手続

 慰謝料請求は裁判外の交渉によって任意に支払われることもありますが、それが難しい場合は裁判所での手続となります。裁判所においても話合いによる解決(調停や和解)を試みますが、それが難しい場合は判決で決めることになります。

夫婦間

(1)夫婦間における請求

 夫婦間における請求(妻から夫への請求、夫から妻への請求)の場合、家庭裁判所の調停において請求することができます。

 慰謝料請求のみがなされるケースは少なく、大部分は離婚と一緒に請求されています。調停が不成立に終わり、家庭裁判所の人事訴訟を提起して離婚を求める場合は、人事訴訟において慰謝料を請求することができます。なお、慰謝料請求のみを請求する場合は、地方裁判所に訴訟を提起します(もっとも、離婚を伴わないで夫婦の一方に対して慰謝料を請求するケースは少ないので、地方裁判所に訴訟が提起されるケースは多くありません)。

第三者

(2)第三者に対する請求

 不貞行為に基づく慰謝料請求など、夫婦以外の第三者に慰謝料を請求する場合は、地方裁判所に訴訟を提起することになります。

 もっとも、他方配偶者に対する慰謝料を同時に請求し、かつ夫婦間の離婚に関する人事訴訟が提起される場合は、同時に家庭裁判所で審理することになります。

4,慰謝料請求に関する弁護士の活用

 離婚や養育費などと比較すると、話合で慰謝料が支払われるケースはあまり多くありません。特に不貞行為を争うケースでは、裁判所における訴訟という形で紛争が生じます。
訴訟は、裁判官が証拠によって認定した事実を元に、慰謝料の有無および金額を決めます。話合がベースの調停と異なり、大部分は書面審理となるので、必要な主張をまとめる能力や、証拠を収集・選別する能力が必要です。これらは専門的な法律知識や裁判所の考え方、慰謝料額の相場観などが必要になるので、有利な解決を図るためには、弁護士を代理人として依頼した方が良いでしょう。

その他の相談

1,養育費の支払額の変更

 離婚した時に子どもが幼い場合、養育費の支払い期間が長期になります。そのため、再婚して子どもが生まれたり、収入が大幅に変わったりするなどによって、当初決めた養育費の金額が不相当になる場合があります。そのような場合は、裁判所の手続によって、養育費の支払額を減額したり、増額したりすることが可能です。

2,親権者の変更

 離婚時には夫婦の一方を親権者として決めますが、離婚後の状況の変化により、親権者の変更が必要な場合も生じます。親権者の変更について父母間で合意があり、かつ子どもにとって不利益ではない場合は、家庭裁判所の調停手続によって親権者を変更することができます。
他方、夫婦間で合意ができない場合は、家庭裁判所による調査を経て、子の利益に鑑みて親権者を変更すべきであると判断された場合は、審判によって親権者を変更することがあります。

3,離婚に伴う離縁

 再婚した場合など、子どもが夫婦の一方と養子縁組していることがあります。このような夫婦が離婚した場合でも、自動的に養子縁組が解消されるわけではなく、離縁の手続をしなければなりません。なお、離婚と離縁の手続は同時に進めることができます。

4,その他

 ここに記載した事項以外でも、離婚に際しては様々な問題が生じうるものです。離婚に伴うトラブルを解決するためには、離婚事件に精通した弁護士に相談することが近道ですので、是非お気軽にご連絡をいただければと存じます。

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